大地は滅び、海は枯れ果て、空だけが無限に広がっている。
その中でただ一つ、天青石(セレスタイン)と呼ばれる不思議な石の力を借り、浮遊している巨大な樹が存在していた。
遠い昔、この世界で生きる人々は誰しもが翼を持ち、
大樹を止まり木として一面に広がる青の中で自由を謳歌していたという。
そして天青石は光を纏い、この世界に幸を与えていた。
しかしいつしか天青石はその輝きを失い、数多の人の背から翼は消えてしまった。
それから長い年月が経ち、今となっては僅かばかりの命が大樹に縋り、寄生する形で生き伸びている。
——何故、人は翼を失ったのか。
その理由をただ一人、空を見上げる少年は知っていた。
これは過ちを繰り返しながらも創世より続く誰かの物語。
けして語られることのない歴史の頁が今、めくられる。
世界
大地と海が滅び、
空と、大樹と、大樹の頂に浮かぶ
青い石だけで構成されている
命あるものは全て
大樹に寄生する形で生きている
天青石
大樹の頂に浮かぶ不思議な力を持つ
透き通った青い石
セレスタインとも呼ばれている
大樹が空へ浮いているのは
この石の力があるため
かつては輝いていたが、
その光は失われてしまった
創世神話
世界と天青石が創られるまでの話
無知の神へ
一羽の黒い鳥が知識を与え
世界は創られたという
翼(現在)
かつて人が持っていたもの
ある時、突如として失われた
その理由を知る者は存在しない
——ただ一人を除いて
人が翼を失う時代
王政最後の時代であり、
人々は王の圧政と、
翼の色による身分の差に
苦しめられていた
また、翼が腐り落ちる
不治の病も蔓延していたという
翼(過去)
誰しもが持っていたもの
翼の色で身分が決められていた
鮮やかな色を持つものほど高貴であり、
くすんだ色を持つものほど
卑しい存在とされていた
その中でも白は最も尊い色であり、
黒は最も卑しい色と
されてきた
病(過去)
過去の時代に流行った病
発症すると
背に奇妙な痣が浮かび上がり、
翼が腐り落ちて数週間以内に死へ至る
人から人へと感染はしないが、
発症条件は不明であり、
治療法は存在しなかった
禁書庫(過去)
大樹の外れにある
鳥籠を模した巨大な建物
その中には読むことを禁じられた
書物が格納されている
存在を知るのは
王と一部の貴族のみ